個人のゲーム製作では、しばしば「妥協が大事」と言われます。
個人製作の場合、技術も資金も時間も足りないので、ある程度妥協しないとゲームが完成しないからです。
わたしもゲームを作りはじめた時に痛感しました。
ただ同時に、「妥協も突き詰めればゲームデザインになるのでは?」とも感じました。
この記事では、わたしの処女作「ラスダンサバイバル」の製作経験をまじえつつ、「妥協からゲームデザインを考える方法」について書いてみました。
すべてはエターナるからはじまった!?
そもそも、ラスダンサバイバルは最初から「これを作ろう」と思って作ったゲームではありませんでした。
最初に考えたのは街1つ、ダンジョン3つくらいの小規模作品。
それでもマップ1つ作るだけでかなり大変で、早々に「あ、これエターナりそう」となりました。
- エターナる
- ゲームが完成せずに、途中で開発が止まってしまうこと。
そこで製作を一時中断し、「どうすればゲームを作りあげられそうか」を考えました。
できないことは諦め、できることから逆算する
作業量が想定よりも多かったので、なにはともあれ物量を減らす必要があります。
しかし元々がダンジョン3つくらいの小規模作品ですから、ここから減らすとなるともう「ダンジョン1つのゲームしか作れないのでは?」 という結論に。
そこで、思いきって冒険の舞台をダンジョンに絞ることにしました。
しかもダンジョンが1つしかないわけですから、最初からいきなりラストダンジョンです。
「ラストダンジョンから始まるストーリーって、どんなのだろう?」 と考えて、ラストダンジョンから脱出するゲームにしたらいいんじゃないかと思いました。
そういえば昔「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」という映画もあったし、逆回しRPGもいけそうだ、と。
- ベンジャミン・バトン 数奇な人生
- 老人として産まれ、年を取るごとに若返る男の一生を描いた映画。
ちなみに、Amazonプライム
会員向けのサービス「プライムビデオ」でも見られます。
それでできたのが、この初期案。
- ラスボス(魔王)を倒すところから始まる
- ラストダンジョン最深部から出口までたどり着くことが目的
この初期案を元に、さらに突きつめて考えていきます。
逆回しということは最初から主人公のレベルが高く、装備やスキルも整っているはず。
ただし最初から最強だとゲームにしづらいため、以下の制約を加えることにしました。
- スキルは最初から全部覚えている
→ただしMP(ゲーム中ではSP表記)が尽きていて、最初から使えるスキルは限られている - 初期装備が最強装備
→ただし耐久度があり、壊れる
また、ある場所から脱出するというと謎を解きながら進める脱出ゲームが思い浮かびます。
しかし謎解きは作れる気がしなかったので謎解き要素を抜き、かわりにサバイバルゲーム的なリソース管理やクラフト要素を入れよう、という方針に。
こうして、「ラストダンジョンでサバイバルしながら脱出を目指すRPG風サバイバルゲーム」という企画がうまれました。
「できない」から考えると工夫する力が身につく
「○○したいけど、今の自分ではできない」場合、とれる方法はだいたい3つです。
- ほかの人に任せる(外注)
- できるように努力する(勉強)
- 代替案を探す(妥協)
妥協というと「逃げ」のように感じられますが、ないものをあるもので代用する力、工夫する力が身につくので、それほど悪くない選択肢だと思いました。
妥協をデザインに変える言葉・「そのかわり」
それでも妥協するとクオリティが下がってしまわないか心配……というのはあります。
それについては、
できない部分についてはあきらめる。
そのかわり、できる部分に関しては可能なかぎりクオリティをあげるように頑張る。
とすることで、妥協を感じさせないように作ることができるんじゃないかと思います。
ラスダンサバイバルでは、「ダンジョンは1つしか作らない。そのかわり、ダンジョンの密度をあげよう」と思いながら作っていました。
具体的には、マップから世界観や生活感が伝わるようにオブジェクトを置いたり、ダンジョン内で発生するイベントを作ったりしました。
焦点を絞ることのメリット
かなり妥協しながら作っていたのですが、「1つに絞ることで、そのぶん深く考えられる」というメリットがあることに気づきました。
もし1番最初の予定通りダンジョンが3つのゲームを作っていたら、1つ1つのダンジョンについてそれほど深くは考えなかったはずです。
あえて1つに絞って3倍の濃度で考えることで、細かい部分を考えられたし、細かく考えたことで経験値もあがった気がします。
「できない」から考えるゲームデザインまとめ
- ゲームを完成させるためには妥協も必要
- 考えることで、できないことを工夫する能力が身につく
- できるところを作りこむことで、妥協を感じさせないゲームデザインにしあげる
- 一点集中して深く考えることで経験値があがる
ゲームを作っていると、かなり幅広い能力が求められます。
ゲームを作ろうとするけどエターナってしまう場合は、まずは自分が持っているものだけでゲームを作ってみると完成に近づくかもしれません。